ラウンド富士 レポート [Round 1 Report]


●最終ラップに大逆転! 井口卓人が開幕ウイナーに

4 月4 日、富士スピードウェイでいよいよ今季開幕ラウンドの戦いの火蓋が切って落とされた。
 その第1 戦の公式予選は、午前10 時40 分から行なわれ、セッション終盤に1 分34 秒019 をマークしたトムスのゼッケン1 を背負う新外国人、マーカス・エリクソンがC クラスのポールポジションを獲得。これに井口卓人、国本雄資のトムス勢が続き、4 番手には戸田レーシングに移籍となったケイ・コッツォリーノ、5 番手にスリーボンドの安田裕信、6 番手にル・ボーセの嵯峨宏紀、7 番手にNMS のルーキー、岩崎祐貴というオーダーに。一方、N クラスではエイムスポーツの関口雄飛が1分36 秒137 でクラスポールを奪い、HFDP RACING の山本尚貴、小林崇志が続くグリッドとなった。
 午後、時間が経過するにつれ厚さを増した曇天から、決勝レースのスタート進行が間近に迫った午後3 時半ごろ、細かい霧雨が降り始める。このため、スタート直前に各チームはセットアップやタイヤ選択に苦慮することとなったが、グリッドへ向かうラップで安田がレインタイヤを履いたほか、グリッド上でコッツォリーノが一旦レインタイヤを履いたものの、結局霧雨が勢いを増すことはなく、N クラスを含め16 台全車がスリックタイヤで15 周の決勝に臨んだ。
 レッドシグナルが消えた瞬間、真っ先に飛び出したのは5番グリッドの安田。センターを割って加速した安田は、コッツォリーノ、国本をかわしエリクソン、井口に続き3 番手で1 コーナーに進入するが、これは反則スタート。1 周目を終えてエリクソン、井口、安田、国本、嵯峨、コッツォリーノという上位陣のオーダーとなるが、2 周目には早くも安田に対しドライブスルーペナルティーの裁定が下される。
 安田が3 周終了時にピットに入り、これでトップ3 はトムス勢3 台になり、嵯峨、コッツォリーノ、岩崎が続くが、5 周目の1 コーナーでコッツォリーノが嵯峨をパスして4 位に浮上を果たした頃から、雨粒は大きくはないものの徐々に霧雨の密度が高まり、コース上はセクター3、さらにセクター1 と路面がウエット状態となっていく。このため、一時1 分38〜39 秒台での周回となっていた上位陣もテールをスライドさせながら1 分41〜42 秒と大きくペースダウンしての走行に。
 こうした中、トップを行くエリクソンが8 周目のダンロップコーナーでコースオフ、1 秒半ほどあった井口とのギャップが、一気にコンマ数秒と僅差に。国本を引き離しながら続いたトップの攻防は、最終ラップの最終コーナーで、エリクソンのインに井口が飛び込み、立ち上がりで2 台は並走するが、リヤをスライドさせた井口との接触を避けるためにエリクソンはグリーンに逃れる。すぐさまコースに復帰したエリクソンだったが、井口との加速競争に0.036 秒差で破れ、劇的な逆転劇で凱歌は井口が挙げることとなった。3 位にはデビューレースながら表彰台を得た国本が続き、コッツォリーノ、嵯峨、岩崎がポイント獲得となる4〜6 位に。ドライブスルーから追い上げた安田は7 位に終わった。
 一方N クラスではポールの関口のエンジンが掛からず、なんとピットスタートとなる波乱。しかし事実上のポールとなった
山本も1 コーナーの混乱の中でコースアウトを喫し、1 周目を終えてトップに立ったのは小林。千代勝正、アレキサンドレ・インペラトーリがこれに続くが、悪化していくコンディションの中、最後方から怒涛の追い上げを見せた関口がじりじりとポジションを挽回する。
 トップを死守していた小林だったが、10周目にインペラトーリ、関口の後塵を拝し3番手に後退。トップに立ったインペラトーリだったが、14 周目の1 コーナーで関口と接触しスピン。これはレーシングアクシデントと判定され、関口はそのままトップでチェッカー。C クラス同様波乱の展開となったN クラスは、関口による劇的なピットスタート→優勝という結果となった。
2 位に小林、3 位には千代が入っている。


全日本F3選手権 第1/2戦富士 予選上位ドライバーコメント

Cクラス

マーカス・エリクソン / Car.No1 / PETRONAS TOM’ S F308
 第1戦予選:PP 第2戦予選:2位
「予選1回目はまずまずうまく行ったね。しかし、予選2回目はちょっとトラフィックに引っ掛かった部分もあったかな。まぁ、基本的には満足だよ。Fニッポンの走行後で、路面は間違いなくグリップが上がっていたと思うし、セットアップもそのコンディションに対応できていたと思う。タイヤ的にも問題なく、長い周回を走る決勝でどんな感じになるか楽しみだね。予選のインターバルには特にマシンを触らなかったけれど、井口が2 回目に大きくタイムを上げているからね、そのあたりデータをチェックして決勝に備えたい」

井口 卓人 / Car.No36 / PETRONAS TOM’ S F308
 第1戦予選:2位 第2戦予選:PP
「予選1 回目に自分の走りができなくて2 番手になってしまったんですけど、予選2 回目には思い通りの走りが出来て、ポールポジションが獲れたので……。1 回目の予選ではセクター2 が良くなかったのですが、そこならばドライバーの問題だと思ったのでクルマは変えずに自分が頑張ろうと予選2 回目に臨みました。自分たちの慣れもあって、大きくタイムが上がったんだと思います。今年は安定して結果を残していきたいと思っているんですが、今日は冷静に走りつつ魅せるレースが出来ればうれしいですね」

国本 雄資 / Car.No37 / PETRONAS TOM’ S F308
 第1戦予選:3位 第2戦予選:3位
「いつもどおり集中してプッシュしていったんですけど、まだ経験が浅い部分とセットアップを完全に煮詰められていない部分があって、3 番手になってしまいました。路面が大きく変わったようには感じなかったですね。トラフィックに引っ掛かったりはしなかったんですが、やっぱりまだ一発のタイムが足りませんでしたね。課題はそこを上げていくことだと思います。
決勝ではスタートに集中し、プッシュし続けてひとつでも順位を上げられるように頑張ります」

ケイ・コッツォリーノ / Car.No2 / TODA FIGHTEX
 第1戦予選:4位 第2戦予選:5位
「今までテストしてきた中で、なかなか自分たちの力を発揮することができなかったんですが、予選でようやくすべてがまとまった感じですね。予選2 回目のように路面が良くなってグリップが上がってくると、少しバランスの面で悪くなってしまう傾向があったのですが、この予選では良いテストのような形になりましたし、良いデータが得られたと思います。決勝でのレースペースは悪くないと思いますし、予選中も1 号車のペースと遜色ない部分も見えたのでスタートさえ決まれば大丈夫だと思います」

安田 裕信 / Car.No12 / ThreeBond
 第1戦予選:5位 第2戦予選:4位
「昨日の午後ニュータイヤが履けなくて、予想の形で予選1 回目を走ったんですが、予想よりもグリップが上がっていてクルマ的に逆の方向に行っていたので、インターバルに修正して。ただ、時間が無かったのでウイングぐらいしか触れなかったので、悪い部分が残っていて結果的に4〜5番手という形になりました。セクター3でグリップ感がなく、その影響でストレートも伸びないんですよね。良くないなりに結果を拾っていかなければならないので、決勝では悪くても表彰台には上がりたいですね」


N クラス

関口 雄飛 / Car.No18 / EBBRO AIM F307
 第1戦予選:PP 第2戦予選:PP
「富士ということもあってフロントタイヤの温まりが今ひとつだったので、最初にコースインしたあとピットに戻り、リヤのみニュータイヤを履いて出ました。予選2 回目は予選1 回目のアタック時に履いたリヤを履いて出て、最初1周だけして交換したリヤで出て。フロントを少し温めたあとでアタックしたかったからなんですが、結果としてはうまく行ったと思います。
決勝ではスタートでうまく前に出て、Cクラスのマシンを何台か間に挟んだ形で戦えれば楽な展開になるんじゃないかと思いますね」

山本 尚貴 / Car.No7 / HFDP RACING
 第1戦予選:2位 第2戦予選:3位
「ポールポジションを狙っていたので、当然この結果には全く納得していません。クルマの方は問題ないので、ドライバーの問題だと思います。そのあたりは午後の決勝に向けて、何が悪いのかを分析して決勝では絶対に勝ちたいと思います」

アレキサンドレ・インペラトーリ/ Car.No20 / ACHIEVEMENT by KCMG
 第1戦予選:4位 第2戦予選:2位
「昨日からずっとセクター3 で苦戦していたんだけれど、予選1 回目でいろいろ試す中でヒントを見つけてね。それでようやく予選2 回目にマシンバランスが改善したんだ。ストレートでは結構速いと思うので、決勝では良いレースが出来そうだよ」



全日本F3選手権 第1戦富士 決勝上位ドライバーコメント

Cクラス

優勝:井口 卓人 / Car.No36 / PETRONAS TOM’ S F308
「今日は雨の中のスタートで、とても難しいコンディションだったのですが序盤はマーカス選手の走りを良く見て、自分の速いところ、遅いところを確認したうえで最終コーナーでインに飛び込んだのですが、うまく前に出ることができて良かったです。レース中は雨がどんどん強くなってきて、怖くてアクセルがなかなか踏めない状況もあったのですが、マーカス選手がミスをして僅差になり、勝負できる展開になりました。彼が最終コーナーでアウトに膨らむことは分かっていたので、うまく仕掛けて並んだまま立ち上がればひょっとしたら勝てるのではと思っていました。明日もポールポジションからのスタートですが、優勝はとても大事ですが、去年のカルロ・ヴァン・ダム選手のようにシーズンを通して安定した走りが出来ればと思っています」

2位:マーカス・エリクソン / Car.No1 / PETRONAS TOM’ S F308
「雨の中、とてもタフなコンディションだった。序盤トップに立ったけれど、タクトも速く、かなりプレッシャーを受けた。
そんな状況の中で、レース中盤にミスをしてしまいギャップを詰められてしまったね。最終コーナーでインにタクトが飛び込んできたのがミラーで見えたので、接触を避けるためにグリーンに出たが、実はあれが最終ラップだとは思っていなかった。
その前にホームストレートを通過したときに、“14” という数字が見えていたので、まだもう1周あるんだと勘違いしていたんだ。もしあれが最終ラップだと分かっていたら、もうすこし違ったアクションができたと思うんだけれど……。勝てなかったのは残念だけれど、良いレースができたと思うよ」

3 位:国本 雄資 / Car.No37 / PETRONAS TOM’ S F308
「今日は初レースが雨ということで少し緊張があったんですが、まずまずのスタートが切れました。でもそれ以上に安田選手の動き出しが速くびっくりしました。けれど、すぐにチームから安田選手はジャンプスタートだという無線が入ったので、無理をすることなく自分の走りに集中しました。3 位に上がってからも、最終ラップまでプッシュしたんですが、前の2 台が本当に速くて追いつけなかったです。序盤に安田選手が前にいる間に出来たギャップが、結果的に最後まで詰められなかったという感じですね」

4 位: ケイ・コッツォリーノ / Car.No2 / TODA FIGHTEX
「コンディションが悪かったので、とりあえず1 コーナーは抑えて行こうと思ったのですが、少しスタートはミスり気味で…。
それで国本選手の真後ろで1 コーナーにアプローチして、クロスラインを狙える位置にいたのですが、背後から後続のマシンがミサイルのようにイン側に飛んできて。それでアウトに逃げるしかなくポジションを下げてしまいました。決勝中は前のマシンとのペースも大きな差がなく、前のマシンが“ミスしてくれ!”って気持ちでした(笑)。ちょっと空力的に足りなくて、後半国本選手に離されたのが残念でしたが、アンラッキーな展開がなければ表彰台も狙えた状況でしたし、ドライビングの練習になったレースでしたね」


N クラス

優勝:関口 雄飛 / Car.No18 / EBBRO AIM F307
「グリッドでエンジンが掛からずピットスタートになってしまったんですが、なんとかギリギリで直ってエンジンが掛かり、ピットスタートに間に合って良かったです。スタートしたときに、1 コーナーを曲がったら最後尾のマシンが結構近くに見えていたので、これならなんとかなるかもしれないと思いましたが、ドライだったら難しかったと思います。雨だったからこそ、優勝することができたんでしょうね。天候に恵まれたという感じです。レース中のクルマの状態は良かったと思いますし、もちろん“ 勝てる” と思いました(笑)」

2 位:小林 崇志 / Car.No8 / HFDP RACING
「関口選手がピットスタートになって2 番手スタートになったのですが、スタートもうまく決まってトップにまで上がることができて。その後、後続のミスなどがあって、ギャップが開いたので勝てる状況ではあったと思うのですが、難しい状況のコンディションに対応できなかったために、結果として2 位になってしまったのかなと思います。他車との競り合いに関しては、これまでもいろいろ経験しては来たのですが、自分のペースが良くない状況で後方から速いマシンが来た場合など、いろいろ勉強になったレースでした」

3 位:千代 勝正 / Car.No22 / NDDP EBBRO
「予選6 位ということで、自分としては不本意なポジションからのスタートだったのですが、決勝前に雨が降り出し、自分にとってはチャンスだと思っていました。序盤スタートが決まって、ラッキーな展開もあって順位が上がったのですが、後半は関口選手やインペラトーリ選手、山本選手、佐藤選手などとのバトルをしたのですが、絶対に競り負けないでとにかくコースにとどまれば、必ず結果はついてくると思って、粘り強いレースができたと思います」

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