ラウンド鈴鹿 第5戦 レポート [Round 5 Report]

■雨の鈴鹿を制し、エリクソン、インペラトーリが初優勝!

 午前10時40分からの公式予選の前に行われたFニッポンのフリー走行の間に雨脚が強まり、予選コンディションはウエットに。金曜の走行は完全なドライで終えていただけに、各陣営は改修後の鈴鹿で初のウエットコンディションを、ぶっつけ本番の予選で迎えることとなった。

 気温17℃、路面温度18℃で始まったこの予選の結果、ポールポジションを奪ったのはなんとNクラスのアレキサンドレ・インペラトーリ。これにCクラスポールのマーカス・エリクソンが続き、2列目以降には嵯峨宏紀、井口卓人、国本雄資、佐藤公哉と、岡山同様Nクラスマシンが雨の中で躍進を遂げることとなった。なお、岩崎祐貴は体調不良のためドクターストップが掛かり、予選出走見合わせている。

 迎えた決勝は午後4時から。F3の予選終盤には雨が弱まっていったものの、午後に入って再び雨が強まったため、午後4時04分にスタートした決勝でも全車レインタイヤでの戦いとなった。

 レッドシグナルが消えた瞬間、フロントロウの2台よりも動き出しが良かったのは井口や国本、そしてケイ・コッツォリーノら。しかし、インペラトーリをかわしてトップで1コーナーに入ったのはエリクソン。コッツォリーノが1コーナーで大外刈りを決めて3番手に浮上を果たす。これに井口、嵯峨、佐藤が続くが、好スタートを決めるも国本は行き場を失って7番手に。1周目のスプーンでインペラトーリをパスしたコッツォリーノが2番手に浮上し、エリクソン、コッツォリーノ、インペラトーリ、井口、嵯峨、佐藤というトップ6で2周目に突入した。

 2周目の130Rで井口がインペラトーリをかわし、トップ3はCクラス勢に。中段では予選で出遅れた国本と安田裕信が徐々に挽回を図り始める。しかし、逆に嵯峨は水温が非常に高くなる症状に見舞われ、惜しくも3周目を終えたところでピットイン、マシンを降りた。

 このあたりからタイヤの消耗に悩まされ始めた2位コッツォリーノは、井口、国本との攻防に忙殺されることとなり、エリクソンにとっては楽な展開に。必死の抵抗を見せるコッツォリーノだったが、130R手前で井口、国本に相次いで先行を許す苦しい走りを強いられ、さらに11周目には安田にもかわされ、5番手にドロップしてしまう。

 コッツォリーノをかわした井口、国本は2分10秒台というハイペースでエリクソンを追ったものの、序盤に築いたマージンに守られたエリクソンは終盤ペースアップ。結局井口の追撃をかわし、右手を突き上げガッツポーズでフィニッシュ。待望のF3での自身初優勝を飾ることとなった。2〜3位には井口、国本が続き、4位には安田。なお、体調不良で予選に出走していなかった岩崎祐貴は、急性虫垂炎の疑いがあるということで第5戦を欠場。明日の第6戦の出場も危ぶまれている。

 Nクラスでは先行したインペラトーリがCクラス勢に先行を許したものの、序盤のマージンを活かして追い上げてきた佐藤、そして山本尚貴を抑えて今季初優勝を飾った。



全日本F3選手権 第5/6戦 予選上位ドライバーコメント

◎ Cクラス ◎

■:マーカス・エリクソン 第5戦予選:PP 第6戦予選:2位
(PETRONAS TEAM TOM’S/Car.No1/PETRONAS TOM’S F308/トヨタトムス)
「また今回も前日と天候が変わって雨の予選ということで、これが日本のF3のルールなのかな(笑)。でも、結果としてはクラスポールも獲れたし、まずまずの予選だったと思うよ。昨日初めて鈴鹿を走って、それでいきなりの雨の初走行だったわけだからね。ただ、予選1回目はバランスの関係もあってフロントタイヤのグリップが路面改修された東コースで強すぎて、フロントタイヤをすぐ傷めてしまったので、そのあたりをインターバルに修正してフィーリングは2回目の方が良かったのに、スプーンで飛び出したりしてダブルポールを逃してしまったんだ。Nクラスのマシンに先行もされたし悔しいけれど、きっと岡山よりは良いレースができると思うよ」

■:国本 雄資 第5戦予選:4位 第6戦予選:PP
(PETRONAS TEAM TOM’S/Car.No37/PETRONAS TOM’S F308/トヨタトムス)
「1回目はアタックしている場所も良くなかったし、フロントタイヤもすぐに壊れてしまって思ったようなアタックができなかったんですが、インターバルでそのあたりのセットアップを調整してもらって、2回目の予選では他車との間隔もうまく空けることができて、自分の力を出し切れたなという感じでした。予選2回目は最後のラップでは黄旗がなくなっていて、全てのコーナーで良いアタックができたと思います。今日はグリッド位置はあまり良くないのですが、雨なので何が起こるか分からないのでスタートを決めて全力を出し切りたいですね。明日はPPなので、(ポールスタートから優勝を逃した)前戦みたいにならないよう、頑張ります」

■:嵯峨 宏紀  第5戦予選:2位 第6戦予選:5位
(DENSO Team Le Beausset/Car.No62/DENSO・ルボーセF308/トヨタハナシマ)
「第5戦予選に関しては、改修後の鈴鹿で初めてのウエットということで、最初探りながら行ったのですが、改修されたセクター1とそのほかの部分で路面のグリップ感がすごく違うので、その切替という点でちょっと難しかったですね。予選2回目に徐々に雨がやんで路面が乾いていく過程での、路面の過渡期の切替がうまくいかなかったように思います。まぁ、黄旗や飛び出したマシンに引っかかったりしたこともあったので、実際には第6戦でももう少し上には行けたと思うのですが。決勝ではスタートをとにかく決めて、雨で速いNクラスとの兼ね合いもあるので、状況を落ち着いて考えながら表彰台を目指します」

■:井口 卓人 第5戦予選:3位 第6戦予選:3位
(PETRONAS TEAM TOM’S/Car.No36/PETRONAS TOM’S F308/トヨタトムス)
「昨日はドライ、今日は雨ということで岡山と似たような展開になったのですが、1回目はちょっと雨量が多くて、フロントとリヤのバランスがクルマ的にもタイヤ的にも取れていなくて、フロントタイヤの磨耗が激しくて。本当に2〜3周でフロントのグリップ感を失って、その後タイムが出なくなった感じでした。それで予選2回目に向けて修正してもらって、クルマは良くなったんですが、自分の判断ミスがあって、黄旗の解除された最後のラップでアタックせず、結果的に逆転されてしまったので……。ただクルマ的には悪くないですし、雨は好きなので、決勝では強い意思を持ってなんとか前のクルマをやっつけたいと思います」


◎ Nクラス ◎

■:アレキサンドレ・インペラトーリ 第5戦予選:PP 第6戦予選:PP
(ACHIEVEMENT by KCMG/Car.No20/ACHIEVEMENT by KCMG)
「いい予選だったね。第5戦予選ではあんなに雨が降るとは思わなかったんだけど、走り出してみたらすごくマシンのフィーリングが良くてね。それでとにかくプッシュしていったんだ。雨の量が多い状態で特にマシンのフィーリングが良かったんだけれど、雨量の減った第6戦予選でもプッシュして、Nクラスでダブルポールが獲れてうれしいよ。でも、特に第5戦でCクラスを抑えて、オーバーオールでのポールというのは最高だね。決勝では雨が強まると良いな、ポールなら視界の問題もないし、いい展開になりそうだから。まぁとにかくまだ予選が終わっただけで、仕事が半分終わっただけ。といかく決勝に集中して良いレースをしたいよ」

■:佐藤 公哉 第5戦予選:2位 第6戦予選:4位
(TEAM NOVA/Car.No23/NDDP EBBRO)
「結論からいえば、第5戦予選でセッティングを失敗して、すぐにフロントタイヤを傷めてしまって。それでも無理やりフロントタイヤをこじってなんとか2番手タイムを出せたんですが、残念ながらタイム的にインペラトーリ選手に迫れる感じではなかったですね。で、第6戦予選には、セットアップを大きく変更して出て、クルマのフィーリング自体は良くなっていたんですが、良いレインタイヤがなくてその傷んだタイヤで出るしかなくて……。なんとかクルマを振り回す感じで走ったものの、そのせいで最後はリヤタイヤも傷んでくる格好になってしまって、全体としてちょっと読みの甘さが出たかなと思います。とはいえ決勝では2番手、4番手からのスタートということで、チャンスがあるポジションですから、前回みたいなミスは犯さずきっちりと良い形でレースを走り切りたいですね」

■:山本 尚貴 第5戦予選:3位 第6戦予選:2位
(HFDP RACING/Car.No7/HFDP RACING)
「雨は得意なんですが、岡山のウエットコンディションでは初めて秒単位で離されてしまって自分の中でも非常に悔しかったこともあり、その分今日は気合が入っていました。チームもいろいろ考えてくれて、クルマも乗りやすくなっていましたし、ギャップは縮められたかなと思います。あとは自分のドライビングで詰められる差だと思いますので、決勝までのインターバルでロガーなどを見ながら詰められる部分を考えたいと思います。結果を出さなければならないシーズンですが、決勝ではどれだけ自分がレベルアップできるかを考えて、結果より過程を大事にして何かをつかみたいですね」



全日本F3選手権 第5戦 決勝上位ドライバーコメント

◎ Cクラス ◎

■優勝:マーカス・エリクソン
(PETRONAS TEAM TOM’S/Car.No1/PETRONAS TOM’S F308/トヨタトムス)
「スタートが決まって1コーナーでトップに立ったんだけれど、そこから少しプッシュして安全圏に逃げることができたので、その後は限界まで攻めずに周回を重ねた。ただ、それでも後半にタイヤがだんだん厳しくなってきたところへ井口が追い上げてきたので、最後にまたプッシュしたんだ。それで最後はちょっと緊張したけれど、うまく逃げ切れて良かった。前回優勝したのはF-BMWに乗っていたときだったから、これが僕にとってF3での初優勝になる。初優勝はやはりすごくうれしいもんだね。日本で乗るチャンスをしてくれたチームに優勝をもたらすことができたこともうれしい。これを明日以降、続けて行ければ最高だね」

■2位:井口 卓人
(PETRONAS TEAM TOM’S/Car.No36/PETRONAS TOM’S F308/トヨタトムス)
「4番手スタートということで予選があまり良くなかったんですが、決勝では雨が多くてスタート直後から視界がすごく悪くて難しいレースになりましたね。2番手に上がった後はペースも良く、エリクソン選手に近づいていっている感覚もあったので、とにかくプッシュして抜くところまでいけるかなと思ったんですが、後半になってやはり僕もタイヤが厳しくなってきて、あれ以上ペースを上げることができなくて……。明日はもちろん優勝できればと思いますが、きっちりと自分の走りをして表彰台を獲りにいきたいと思います」

■3位:国本 雄資
(PETRONAS TEAM TOM’S/Car.No37/PETRONAS TOM’S F308/トヨタトムス)
「今日のレースはスタートもうまく決まって、ポジションが上げられるかなと思ったんですが、1〜2コーナーで行き場を失ってしまって、何台かのマシンに逆に先行されてしまいました。その後もプッシュしていったんですが、本当に集団の中では前が水しぶきで見えなくて。なんとか順位を上げていったんですが、3番手に浮上した段階でトップの2台とのギャップが大きく開いてしまっていた感じです。コッツォリーノ選手とのバトルでは、横に並んだので絶対に抜いてやろうという気持ちで130Rに入っていきましたが、ちょっとドキドキしましたね(笑)。明日はポールからのスタートですが、今日前のマシンがいなくなってからのペースが良かったですし、明日につながるレースができたと思うので、しっかりスタートを決めてポール・トゥ・ウインしたいですね」

■4位:安田 裕信
(ThreeBond Racing/Car.No12/ThreeBond/ニッサンスリーボンド)
「予選ではエンジニアと相談した上で、少しセットアップ的に冒険したのですが、それがうまくいかなくて。それでセットアップを普通に戻す感じで走ったので、決勝ではなんとか追い上げることができました。スタート位置が悪かったので、前がまったく見えない状況でしたし、ちょっと追い上げるのが大変でしたけれど……。まぁペース的には悪くなかったので、ちょっと予選が悔やまれますね。方向的には悪くないと思うので、明日は5番手ですし、また雨になってもいいレースができるんじゃないかと思います」


◎ Nクラス ◎

■優勝:アレキサンドレ・インペラトーリ
(ACHIEVEMENT by KCMG/Car.No20/ACHIEVEMENT by KCMG)
「スタートしてから数台のCクラスのマシンとの戦いになったけれど、彼らとはストレートスピードが違うし、Nクラス2番手のマシンとのギャップもあったので、安全にというか、あまりリスクを犯さないよう無理はしなかった。予選でのパフォーマンスは良かったけれど、今日の決勝ではセットアップ的にまだ改善すべき点もあったから、コンディションがどうなるか分からないけれど、そのあたりを明日までに調整したいね。今回特にマシンが大きな進化を遂げたというわけじゃない。ただ、今季ここまでパフォーマンスは良かったもののなかなか勝てなかっただけに、今日の優勝はうれしいね。チームも僕も最大限の努力をしているので、こうした結果をまた続けられるよう頑張りたいね」

■2位:佐藤 公哉              
(TEAM NOVA/Car.No23/NDDP EBBRO)
「インペラトーリ選手は総合でのポールということで、総合6番手スタートの自分とは最初からギャップがあったわけですが、スタートがあまりうまくないので、とにかく普通にスタートを切ろうという意識でスタートしましたが、まずまずのスタートが切れて1周目にCクラスのマシンを何台かパスできました。それで少しずつインペラトーリ選手に近づいて行っていたのですが、レース中盤に後方から追い上げてきた2〜3台のCクラスのマシンとのやりとりで少しペースが落ちてしまい、結果的にそのときに開いた差を詰め切れなかったという感じでした。ペース的に自分はいっぱいいっぱいでしたが、インペラトーリ選手は余裕があるように見えていたので、最後はリスクを避けて2番手キープという形になりました」

■3位:山本 尚貴              
(HFDP RACING/Car.No7/HFDP RACING)
「スタートで若干ミスしてしまったのと、序盤前のマシンを早目にパスできなかったことが、最終的な結果に響いたと思います。視界が本当に悪く、状況的には厳しい部分もありましたが、今日のレースでは岡山とは違って上位陣との差も少なく、いい状況にあったと思います。今日のレースを終えて、ドライでもウエットでも勝てるという自信は持つことができましたし、後は自分の手で勝つチャンスをつかめるよう、最大限の努力をして、一日でも早く勝てるようにしたいですね」




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