ラウンド鈴鹿 第9戦 レポート [Round 9 Report]

二転三転の乱戦を制し、国本雄資が優勝!ポイントリーダーに

 曇り空ながら、心配された雨の気配もなく気温29℃、路面温度38℃というコンディションで始まった第9戦決勝は12周の戦い。

 午前の予選でポールポジションを奪ったのは、戸田レーシングのケイ・コッツォリーノ。しかし、1分54秒325をたたき出し、チームにとって2000年の荒聖治以来というポールポジションをもたらしたコッツォリーノだが、富士の第8戦で国本雄資に追突したために、今回2グリッド降格処分が決まっており、決勝は3番グリッドからのスタート。代わって、トムスの国本、井口卓人がフロントロウに並ぶことに。また、予選で4番手タイムをマークしたマーカス・エリクソンだが、こちらも予選中にコースオフし、コースに復帰する際、アタック中の後続車両のライン上に出てしまったということで危険行為と判定され、2グリッド降格処分を受け、6番グリッドからのスタートとなり、ル・ボーセの嵯峨宏紀、スリーボンドの安田裕信が4〜5番手スタート。

 一方、NクラスではHFDP RACINGの山本尚貴が1分56秒644のレコードタイムで、今季初のポールポジションを獲得。チーム・ノバの佐藤公哉、ACHIEVEMENT by KCMGのアレキサンドレ・インペラトーリが2〜3番手に続き、さらに小林崇志、千代勝正、関口雄飛らがトップ6となった。

 午後4時03分、レッドシグナルが消えた瞬間、国本、井口、コッツォリーノはまずまずのスタート。しかし嵯峨は加速に失敗し、イン側からエリクソン、アウト側から安田の先行を許すことに。こうして1周目は国本、井口、コッツォリーノ、安田、エリクソン、嵯峨、岩崎祐貴というオーダーに。

 トップに立った国本は「このまま逃げ切れるのでは」と考えたというものの、西コースでは井口のペースが勝り、2台は序盤から拮抗した首位争いを展開。その背後では、2周目に安田、3周目にコッツォリーノをパスしたエリクソンが3位に浮上を果たす。

 拮抗した接戦を演じる国本と井口だったが、6周目のシケインへのブレーキングで井口がアウトから国本に並びかけ、最終的には井口が先んじてシケインに向けターンイン。しかし、ここでイン側の国本の左フロントとアウト側の井口の右リヤが接触。バランスを崩した井口がグリーンを突っ切り、シケイン立ち上がりでコースに復帰もスピンを喫してしまうが、これで国本との間合いを詰めたエリクソンが、続く7周目の1コーナーで国本をオーバーテイク、一気に首位に躍り出る。

 レースの折り返し時点ではエリクソン、国本、コッツォリーノ、安田、嵯峨、岩崎、そして井口という状況となったCクラスだが、このままのオーダーでのフィニッシュかと思われた終盤、11周目のホームストレートでミッションに不具合を抱えたエリクソンが突如失速。ここで急転直下、国本がトップに返り咲くことに。さらにヘアピンからスプーンに向かうところで再度失速したエリクソンは、コッツォリーノ、安田にも先行を許し、最終ラップには嵯峨にも先行され5位でフィニッシュ。結局「接触で左フロントにダメージがあり、アンダーステアで苦しかったが、展開にも恵まれた」という国本が今季3勝目をマーク、ポイントランキングでも単独首位に立つことに。2位にコッツォリーノ、3位に安田が入り、井口は6位に沈んだ。

 一方Nクラスでは、スタートを決めたインペラトーリが、スタートミスした佐藤に続き、1〜2コーナーで山本をも捕らえ、一気にトップに躍り出ることに。3位には小林、4位には千代、さらには黒田吉隆らがポジションを上げた。

 トップを譲ったものの、ペースに勝る山本は幾度となくインペラトーリを攻め立てるが、シケインのブレーキングや1〜2コーナーで際どく凌いだインペラトーリが首位を守り、一進一退の攻防が続く。しかし、10周目のデグナーふたつ目の立ち上がりで山本が痛恨のスピンを喫し、クラス6番手に後退してしまう。こうしてマッチレースに終止符が打たれ、「タフなレースだっただけに、山本が背後からいなくなり正直ホッとしたよ」と振り返ったインペラトーリが、結局そのまま逃げ切って今季2勝目を飾ることに。2位には小林、3位には佐藤が入った。



全日本F3選手権 第9戦 決勝上位ドライバーコメント

◎ Cクラス ◎
■優勝:国本 雄資
(PETRONAS TEAM TOM’S/Car.No37/PETRONAS TOM’S F308/トヨタトムス)
「ポールポジションからスタートがうまく決まって、このまま逃げ切れるかと思ったんですが、井口選手がシケインでアウトから並んで来て、そのときに少し接触してしまって……。最後の最後では、井口選手のほうが前にいたのであきらめかけたんですが、僕の左フロントと向こうの右リヤが当たってしまった感じでした。その結果、エリクソン選手に先行されて2番手になってしまったんですが、終盤にエリクソン選手がトラブルに見舞われてペースダウンしたということでトップに返り咲くことができました。終盤は接触の影響でアンダースステアがきつくなったんですが、なんとか逃げ切れた感じです。今日の結果でポイントリーダーになったことはうれしいですが、ここで気を緩めるようなことはせず、しっかりと戦ってこのまま逃げ切りたいですね」

■2位:ケイ・コッツォリーノ
(TODA RACING/Car.No2/TODA FIGHTEX/無限戸田)
「スタートは普通で3番手につけていたんですが、序盤のうちに、決勝の路面コンディションが予選のときと違うと感じて少しペースが上げられなかったですね。そのためやや慎重に前のトムス勢の状況を見ていたんですが、後ろからエリクソン選手が来て、圧倒的に速くて抜かれてしまって。その後は安田選手からも結構プレッシャーがあったので、気が抜けませんでした。後半になって周囲もペースが落ちてきたとき、自分は結構安定していたので、その点では明日に向けたレースになったなと。グリッド降格のペナルティーがなければ、もう少し展開は違っていたかもしれませんが、今日の自分たちのスピードでは、おそらくポールからスタートしていたとしても抜かれていたでしょう。とはいえ、いろいろ苦しい状況の中で2位になれたということは、チームに感謝したいですね」

■3位:安田 裕信
(ThreeBond Racing/Car.No12/ThreeBond/ニッサンスリーボンド)
「昨日のテストから調子が今ひとつでタイムが出なかったんですが、予選もあまり状況は変わらず良くなくて。ただレースではミスも少ししかなく淡々と走れましたから、この3位という結果にはすごく満足してはいるものの、まだまだ他のマシンに比べてタイム的に負けているので、速さをもっと追求できるようにセットアップも含めて、明日のレースに挑みたいと思います。セクター1と2が前回の鈴鹿開催では遅れていたのですが、今回クルマが良くなってきたので、あとはセクター3ですね。セクター3が非常に遅い状況なので、その原因が何かをまたチームとミーティングして、明日の第10戦で再トライしてみたいと思います」

■4位:嵯峨 宏紀
(DENSO Team Le Beausset/Car.No62/DENSO・ルボーセF308/トヨタハナシマ)
「スタートで1速から2速にシフトアップするときにうまく入らず、それで失速する感じで、エリクソン選手と安田選手に先行されてしまったのが痛かったですね。その後は、前にひっつきすぎるとダウンフォースを失うというのはいつものことなんですが、そんな状況でも今日はそこそこついていけて。そんな展開だったので、序盤はタイヤを温存する感じだったので終盤のペースは悪くなかったんですが、予選のポジションやスタート直後のポジションが良ければ、もっと生きた戦略でしたね。いずれにせよスタートがすべてでした」

■5位:マーカス・エリクソン
(PETRONAS TEAM TOM’S/Car.No1/PETRONAS TOM’S F308/トヨタトムス)
「今日はおそらく僕のキャリアの中でもベストに近いレースだったね。スタートがばっちり決まって、序盤の2〜3周がとても速くてポジションを3番手まで上げることができ、さらには前で争っていたユウジとタクトのアクシデントによってチャンスをもらい、うまくユウジをパスしてトップに立ち、レースをリードしたんだから。けれど、終盤になって急に5速がなくなってしまったんだ。それでユウジに抜かれてしまい、その後もショートシフトで6速に入れたりして凌いでいたんだけれど、最後はそれもできなくなって5番手まで落ちてしまったんだ。もちろん残念だけれど、パフォーマンスにはとても満足しているし、明日はきっといいレースができると思うよ」


◎ Nクラス ◎
■優勝:アレキサンドレ・インペラトーリ
(ACHIEVEMENT by KCMG/Car.No20/ACHIEVEMENT by KCMG)
「今日の勝利のカギは、やはりスタートだったね。Nクラスの3番手スタートということで、あまり良い状況ではなかったんだけれど、スタートがうまく決まって佐藤選手を右側からかわし、1〜2コーナーでは山本選手にアウト側から並びかけ、ぎりぎりで前に出ることができたんだ。しかし、その後は非常にタフなレースになった。僕のマシンのドラッグが大きいせいか、山本選手はすごくスリップが効いている感じで、スプーンの立ち上がりでは離れているのに、毎周のようにシケインのブレーキングでは並びかけられた。なんとか彼の攻勢をしのいでいたが、彼がスピンか何かで背後からいなくなったあとは、正直ホッとしたよ。とにかく今日は厳しい展開の中、ほぼノーミスで走れたことが勝利につながったね」

■2位:小林 崇志
(HFDP RACING/Car.No8/HFDP RACING)
「スタートがうまくいって、1コーナーまでに3番手にポジションを上げることができたんですが、1周目の3番手争いのためにトップ2台から離されてしまって。序盤ペースが良かったのですぐにトップ争いに追いつくことができましたが、逆に後半には徐々にペースが落ちてしまって、ペースは今ひとつだったなと思いました。山本選手のスピンで結果的に2位にはなれたんですが、トップとの差も最後は開いてしまい、まだまだスピードが足りないなという感じです。山本選手がどのような状況になったのかは見えませんでしたが、おそらく縁石に乗ってスピンしてしまったのだろうなと思いますが、その周のシケインの立ち上がりでギヤがうまく入らなくて、そこでインペラトーリ選手とのギャップが開いてしまいました」

■3位:佐藤 公哉
(TEAM NOVA/Car.No23/NDDP EBBRO)
「2番手スタートだったのですが、ご覧のとおりスタートで失敗して一気に5番手辺りまで落ちてしまったと思います。その後ポジションキープだったのですが、1〜2コーナーでチームメイトの千代選手に並んだのですが、グラベルに押し出される格好になってしまって。その際に、結構デコボコのところを走ったせいか、空力的にどこか壊れているようなフィーリングがずっとあって、アンダーステアに悩まされているような感じでペースが上げられなかったですね。それでも、もし何らかのダメージがあってあのペースならば、逆に明日のレースはスタートをきちんと決めればチャンスがあるのかなと思っています」




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