ラウンドSUGO 第16戦 レポート [Round 16 Report]

●マッチレースのタイトル争い! 逆転でエリクソンがチャンピオンに!

 汗ばむような陽気となった土曜とは打って変わって、気温19℃、路面温度28℃と肌寒い曇天下での戦いとなった、今季最終戦。井口卓人とマーカス・エリクソン、トムス勢同士のタイトル争いの天王山となった一戦は、午後零時40分にフォーメイションがスタート。

 この第16戦、ポールシッターはエリクソンながら、井口も予選2番手。タイトルを争うふたりに国本雄資、安田裕信、嵯峨宏紀、岩崎祐貴が続き、第15戦予選でクラッシュしたために第16戦予選に出走しなかったケイ・コッツォリーノは最後尾となる16番グリッドからのスタートということで、上位3列目までにCクラスが並ぶこととなった。

 迎えたスタート。アウト側スタートのエリクソンは、僅かに動き出しが鈍く、イン側スタートの井口が1コーナーでトップに立ち、国本、嵯峨、岩崎がこれに続くことに。

 トップに立った井口は、このままエリクソンの前でゴールさえすればチャンピオンを手中に収められる状況。逆にエリクソンは逆転タイトルのためにはどうしても井口を抜かなければならないという状況。チャンピオンを巡るふたりの攻防は、じりじりと3番手の国本以下を引き離し、完全なマッチレースとなっていく。

 最終コーナーでの速さを生かし、幾度となく1コーナーのブレーキングで井口のインを伺うエリクソンだが、井口もギリギリのブレーキングをこれを許さず、コンマ数秒差のタイトル争いがレース中盤まで続いたが、11周目にエリクソンがSPアウトコーナー立ち上がりで僅かにコースオフ、コンマ7秒とややギャップが広がった上、タイヤに小石を拾ってしまったことで12周目にはギャップはコンマ9秒に。さらに13周目のシケインでエリクソンがミスをしたために、一時トップ2台の差は1秒半にまで拡大、井口をタイトル手中に収めるかと思われた。

 しかし、エリクソンは再びじりじりと井口に詰め寄ると、18周目には再び両者のギャップがコンマ3秒を切る僅差に。そして迎えた21周目、1コーナーでエリクソンはついに井口のインを強襲。エリクソンが頭ひとつ抜け出る形で立ち上がった両者だったが、アウト側の井口は行き場を失ってコースオフし、2コーナーでスピン。イン側の縁石で亀の子状態となった井口は、その場でマシンを降りてしまう。

 この井口のマシンを排除するため、コース上にはセーフティーカーが入ったが、リスタートも決めたエリクソンがトップのままチェッカー。拮抗したタイトル争いを制し、大逆転で今シーズンのCクラスチャンピオンを獲得した。

 エリクソンに続いたのは、リスタートで国本をパスした安田。4位には最後尾から追い上げたコッツォリーノが入り、リスタートの翌周に1コーナーで接触しコースオフした岩崎と嵯峨が1周遅れながら完走扱いとなり、5〜6位となった。

 一方、Nクラスでは好スタートで1コーナーを制した2番手スタートの小林崇志がレースをリードするも、ポールシッターの山本尚貴が2周目の1コーナーでトップの座を奪い返し、じりじりとリードする展開に。スタートで3番手には千代勝正が浮上し、反則スタートを取られたアレキサンドレ・インペラトーリはドライブスルーペナルティーを受け大きく後退する。

 結局セーフティーカーからのリスタートも難なく決めた山本が王者らしく有終の美を飾ることとなったが、2位にはリスタート後に小林を捕らえた千代が入っている。




全日本F3選手権 第16戦 決勝上位ドライバーコメント

◎ Cクラス ◎
■優勝:マーカス・エリクソン
(PETRONAS TEAM TOM’S/Car.No1/PETRONAS TOM’S F308/トヨタトムス)
「アメイジングなレースだったというしかないね。凄くタフなレースになると思っていたけれど、スタートが決められずに井口選手に先行され2番手に落ちたことで、それが一層厳しいものになったんだ。ただ、今週末は自分が一番速いんだという自信があったし、チャンピオンになるためには井口選手を抜かなければならないということは分かっていたので、最後まで諦めるつもりはなかったので、ずっとプッシュし続けた。レース序盤から中盤にかけて何度か1コーナーのブレーキングで井口選手のインを伺っていたけれど、ちょっと飛び込むには危険すぎた。けれど、チャンピオンになるためにはやらなければダメなんだと思って、レース後半にうまく最終コーナー立ち上がりで井口選手のスリップについた。それで1コーナーのブレーキングで彼のインに飛び込んだんだ。ギリギリの攻防だったけれど、接触もなかったし、凄く良い戦いができたと思う。最終戦であのような素晴らしいレースをチームやファンの前ですることができて、その結果チャンピオンになれたということで、今は信じられない気持ちだよ!」

■2位:安田 裕信
(ThreeBond Racing/Car.No12/ThreeBond/ニッサンスリーボンド)
「オートポリスからクルマの調子が良く、チームも非常に良い状態のクルマを用意してくれたのですが、金曜日の午後に2セットニュータイヤでのアタックを予定していたのに、1セット目に自分のミスでクラッシュしたことによって、昨日の予選と第15戦決勝に向けてマシンのフィーリングを取り戻すことが難しくて苦しかったのですが、今日の第16戦に関してはチームが頑張って直してくれて。なんとかラッキーもあって、今日は2位にまで上がることができました。最終戦でトムス勢の間に入ることが出来たことは、チームとしても良かったと思うし、来季スリーボンドレーシングはチームとしても、もっともっと強くなるような予感がしているので、良い仕事ができたんじゃないかと思いますね」

■3位:国本 雄資
(PETRONAS TEAM TOM’S/Car.No37/PETRONAS TOM’S F308/トヨタトムス)
「今日はスタートが勝負になると思って、凄く集中してスタートに臨んだんですが、自分としては良いスタートが切れたものの、前の2台も同じように良いスタートを切っていて、残念ながら抜くまでには至らなかったです。その後はプッシュして前に着いて行こうと思ったんですが、クルマのバランスが悪くて、凄くオーバーステアが強くて着いていくのは無理でした。セーフティーカーが入ったときにはトップのエリクソン選手との間にNクラスのマシンが入ってしまって、リスタートでエリクソン選手を抜こうと思っていたのですが、Nクラスが前にいたこともあって加速で詰まってしまい、残念ながら安田選手に抜かれてしまった形ですね」

■4位:ケイ・コッツォリーノ
(TODA RACING/Car.No2/TODA FIGHTEX/無限戸田)
「今週末はやはり持ち込みのクルマの状態が良くなかったので、結果的にワンテンポ、みんなと比べてリズムが遅れてしまったように感じます。しかし、苦しい状況からのスタートでしたが、今日の決勝ではファステストラップを狙えるくらい、良い状態にクルマが仕上がっていたので、週末の中でのステップアップという部分では非常に良かったと思います。そのあたりに関しては、今後のレースがあるとしたら、生かせる部分なんじゃないでしょうか。リスタートしてすぐ嵯峨選手と岩崎選手が目の前で激しく競っていましたが、僕は今日最後尾スタートでしたし、マカオ参戦を考えていますから、冷静にクルマをなるべく壊さないようにということも目標だったので、それが出来て4位になれたということがうれしかったですね」


◎ Nクラス ◎
■優勝:山本 尚貴
(HFDP RACING/Car.No7/HFDP RACING)
「優勝できたことはうれしいのですが、ちょっと複雑ですね。昨日の課題だったスタートを、今日も決めることができなかったですし、そこでポジションを落としてしまったので。ただ、抜かれても絶対に抜き返す自信はあったので、腐らずに攻めることだけに集中して走りました。小林選手も良く周囲を見ていてくれて、接触することなくクリーンなバトルができたなと思います。セーフティーカーが入ったときには、正直“せっかく築いたリードが……”という気持ちもあったのですが、落ち着いてスタートを決めれば絶対に抜かれることはないと自分を信じて、またスタートを決めリードを作ることができました。最終戦を優勝という良い形で締めくくることができて良かったと思います」

■2位:千代 勝正
(TEAM NOVA/Car.No22/NDDP EBBRO)
「4番手スタートから1コーナーで3番手に上がって、そのままトップの2台について行く形となって、追い上げようと思ったのですが、中盤あたりでペースが上がらず1周コンマ2〜3秒ずつ離されていくようなレース展開になってしまって。スピード的には課題の残るレースになったと思いますが、結果的にセーフティーカーが入ってチャンスが来て。タイヤかすを拾って非常に不安定な状況になってしまいましたが、前のクルマも同じような状況で、最終コーナーでうまく合わせて1コーナーで抜くことができました。岩崎選手と嵯峨選手が接触した周の1コーナーで抜いたのですが、その際に左リヤをヒットしてしまって、酷いオーバーステアになり最終ラップは本当にギリギリでした。けれど、なんとかポジションを守ることが出来て良かったです。少ないチャンスを生かして2位という結果が残せたのは、チームのみなさんへの1年間の感謝の気持ちを込められたような感じで良かったと思います」

■3位:小林 崇志
(HFDP RACING/Car.No8/HFDP RACING)
「昨日は1コーナーで接触してしまったので、今日は絶対にクリーンなレースをするということを、まずは心がけていました。ただ、スタート自体は昨日も良かったので、今日もうまく決められる自信がありました。実際にうまく行って1コーナーでトップに立つことができたのですが、序盤のペースの上がりが遅く、結果的に山本選手に逆転されてしまいました。その後1秒前後のギャップが開いてしまったのですが、セーフティーカーのリスタート直後もタイヤが冷えている状況でペースが最初上がらなかった上に、前でCクラスのマシンが激しく競り合っていて、ちょっと自分も冷静さを欠いてしまった感じで、最終コーナーをうまく走れなかったことで結果的に3位にポジションを落とすという、残念なレースになってしまいました」







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