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2008 井口卓人選手・国本京佑選手 スペシャルインタビュー 7月7日
 
 今季、チャンピオンチームであるトムスから全日本F3選手権にステップアップした、国本京佑と井口卓人。ルーキーながらも、ともに既にF3での優勝を飾っているほか、スーパーGTにも参戦するなど、忙しくも充実した毎日を送っているという。注目のふたりをパドックに尋ねた。


───二人は今季FCJからステップアップしてきたわけですが、もうF3にはすっかり慣れましたか? もう戸惑いもない?

井口:
いや、まだ何も戸惑うことはないというレベルには達していないと思います。やっぱりまだ足りない部分がたくさんあるので……。
国本:常に前進しているつもりですけれど、いつも色々と悩んでいますよ、クルマの作り方だとか。


───F3になるとセットアップの自由度も一気に増えますから、そのあたりが難しいですか。

国本:
これまで経験してきたカテゴリーに比べると、F3はセッティングを触る場所もすごく多く、さらにその度合いも桁違いに大きいので、やっぱりそのあたりは大変です。
井口:どこから触るべきなのか、というのが難しいんですよ。この状況で、まず最初にやらなければならないのがどこなのか、どれぐらい変更すれば良いのか、というのが分からない。


───今はどのような形でセットアップを進めていますか?

井口:
やはりトムスは実績があってデータが豊富なので、基本的にはチームのほうで準備していただいていて、細かいパーツだとかセッティングの調整だとかは、僕たちのほうからリクエストしたりしています。
国本:やはり、F3はプロになる最終段階という感じで、パーツの開発なども経験させていただけるし、いろいろなコメントの仕方を学んだりも出来るし、本当に勉強になります。
井口:F3は本当にちょっとしたコメントのミスでセットアップが正反対の方向に行ってしまったりして、パフォーマンスに大きな差が出てしまうので難しいです。まだFトヨタの頃には多少セッティングが違っていても、自分のドライビングで何とかできる部分があったような気がするんですけど、F3ではセッティングが違っていたら、もう絶対に良い位置では戦えない感じですね。


───では、F3に上がってから日頃の生活面では何か変化がありましたか?

井口:
やはりF3になるとフィジカル面が大変ですよね。今年はエボサスというパーツもあって、ステアリングが重い状況もあるし、FCJやFトヨタとは比べ物にならないほどフィジカル面では辛いんです。だから毎日のウエイトトレーニングだとか、フィジカル面を向上させるためのトレーニングを増やしています。それに、メンタル面のトレーニングだとか、今まで以上にやらないと。F3って世界共通カテゴリーですから、自分にとってはすごくいいハカリになると思うんですよね、マカオとかで世界中のドライバーと戦うわけですから、そのための準備をしっかりやらないと。だから、F3に上がってからはこれまで以上にサーキットの外でやらなければならないことも増えましたね。うれしいことですけれど、メディアの方々と話す機会も増えたし、やはり自由に使える時間が減りました。
国本:基本的には僕も彼と同じ状況なんですが、今年から御殿場でひとり暮らしを始めたので、やはりひとりは寂しいですね(笑)。


───F3に上がってから、周囲の人との関係や、周囲からの要求されることが変わったりしましたか? プレッシャーを感じたり……。

国本:
エンジニアをやっていただいているトムスの山田健二さんとは、やはりFCJのころは時折話す程度だったのが、今では一緒に過ごす時間も長くて話す内容も大きく変わりましたね。けれど、監督の関谷正徳さんとは以前と全く変わりませんね。こと細かく、というよりは要所でコメントしていただいている感じです。
井口:そうですね。トムスというF3チームのこれまでの実績がすごいので、やはり自ずとプレッシャーはありますね。掛かっているお金も、今まで自分が走っていたカテゴリーとは比べ物にならないわけで……。やはり成績を出さないと、というプレッシャーは感じていますね。
国本:僕はそんなにプレッシャーは感じていないですよ。
井口:さすが〜!(笑)


───ふたりともGTにも出ているし、忙しさという面では去年までの比ではないでしょう?

井口:
僕の場合、GTは開幕から出ていたわけではないのですが、それでも今年はF3も2週間おきのタイトなレーススケジュールが続いていたので、本当に自分の部屋にいる時間がほとんどないような感じですね。さっきも話したように、トレーニングのためにジムとかに行きたいんですが、レースウィークの連続でサーキットに行ってしまうのでジムに行けないとか、そういう感じですね。
国本:レースウィークに入ってしまうと、やはりフィジカル的なトレーニングはしないですからね……。できれば御殿場にいる時間にトレーニングをしたいんですが、なかなか時間が取れないという状況もありますね。


───平日、御殿場ではどのような感じでふたりは過ごしていますか?

井口:
朝、7時半くらいに起きて、8時ごろに自転車で家を出てトムスの工場に向かうのですが、途中朝ご飯を食べたりして、そして9時からの朝礼に出るという感じですね。
国本:そうそう。
井口:そのあと1時間ぐらいはエンジニアの健二さんとミーティングしたり、メカニックの方々と話してコミュニケーションを取ったり、クルマの勉強をしたりして、工場にいますね。そのあと家に戻ってジムに行き、昼の1時ぐらいまではトレーニング。それから昼ご飯です。
国本:それから午後は家に戻って、部屋の掃除をして、それからまたジムです。


───またジムに?

井口:
ジム、一日に2回行くんですよ。午前2時間、午後2時間くらいですかね。
国本:午前中は有酸素運動、午後はウエイトやるって決めたんですよ。それが終わってから、晩ご飯ですね。


───自炊はしないのですか?

国本:
今のところ、ほとんど自炊はしていませんね。この前、やっと包丁とまな板と、ネギと豆腐買いました。冷奴食べようかなと思って(笑)。
井口:でも、結局そのまま今週のレースウィークに入っちゃったので、今頃腐っちゃってると思いますけどね(笑)。腐らせちゃうから、なかなか材料買ってきて自炊しようって、ならないんですよ。


───ふたりとも既にF3で優勝を経験しているのですが、戦前に予想していたものと、実際に経験した優勝とでは、何か違いがありましたか?

井口:
どうでしょうね、ホッとしたというのが一番大きかったですけど。自分の場合は結構あっさりと勝ててしまったので……。自分としては去年までも一生懸命頑張っていたつもりだったのですが、FCJとFトヨタ合わせて3勝しかできなかったのに、その勝ち星をF3ではいきなり開幕の2ラウンドで挙げてしまって。今年も当然努力していますが、勝つときというのは予選〜決勝とも、何事も起こらずにあっさりと行ってしまうものなんだなって。ただ、スケジュールがタイトだったので、あまり優勝の余韻に浸っている時間はなかったんですけどね(笑)。
国本:開幕の富士では相当な苦悩があったので……(笑)。オートポリスで勝ったのですが、あれもたまたまですよ。たまたまスタートが決まって、前に出ることが出来て……。F3って前に出られれば、なかなか抜かれないじゃないですか。だから勝てたようなものですよ。自分が後ろに付いたとき、色々試したんですがどうしても抜き切れなかったですからね。それに、あのとき僕の後ろを走っていたのがチームメイトの2台だったので、使っているものも同じだし、絶対抜かれないなと思っていました。自分が前に出たら、こんなに楽なんだと驚きました。だから、F3では本当に予選とスタートが大事だなと痛感しました。
井口:そうそう、9割ぐらい決まってしまう。
国本:9割5分じゃない?
井口:そう、その9割5分が予選のポジションとスタートで決まってしまうんですよ。だから、前に出ることが出来れば相当なミスをしない限り、大丈夫だなと思いますよ。Fトヨタは空力にあまり頼っていないせいか、もっとバシバシ抜きに行けたんですが、FCJ、F3は難しいですね。


───オートポリスではふたりがスタート直後に接触するということがありましたが、どのように仲直りを?

井口:
レースが終わってすぐに、取りあえずひと言ふた言会話はしたんですが、直後は国本君にどう接したら良いか分からなかったですね。きっと彼も悔しい思いをしているだろうし、とか考えちゃって。だから向こうから何か言って来たら話そうかな、という感じでしたね。でも、結構すぐに彼の方から「おめでとう」って言ってくれて、とても楽になりましたね。もちろん、うわべ上のおめでとうだったとは思いますが(笑)。
国本:そりゃ〜、完全にうわべでしたよ(笑)。でも一応、そういうことは言っとかないとダメかなと思ったんで。でも、結局その日の帰りの車の中ではもう普通に話してましたよ。


───当然ふたりともチャンピオンを狙っていると思いますが、当然チャンピオンにはひとりしかなれませんよね。自分が敗れたとしても、受け入れられるものですか?

国本:
難しい質問ですね。
井口:そうですね。もし、自分以外の人がチャンピオンを獲ったとしたら、その人は僕以上にどこかの部分で努力をしていたから、そういう結果を残したんだなと受け入れられると思います。
国本:僕は受け入れられないです。でも、やっぱり、もし自分が負けたとしたら受け入れないと仕方ないですよね……。基本的に、いつもトップに居続けることっていうのは不可能だと思いますから、良いときもあれば悪いときもある、波があると思うんですよね。だから、長いシーズンを考えるとチャンピオンを獲るのは、好不調の波が少なかったというか、結果としてそうなっただけで、本当に速いのは自分なんだと考えるかもしれないですね。


───なるほど、ではチャンピオンが獲れるよう、後半戦も頑張ってください。

井口・国本:
頑張ります!




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