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2008 安田裕信選手 スペシャルインタビュー 10月11日  
 
 昨年全日本F3選手権にステップアップを果たすも、最高位は4位と一歩表彰台に届かなかった安田裕信選手。2008年シーズンも昨年と同じスリーボンドレーシングに残留し、1台体制ながらも2勝をマーク、一時はタイトル争いの一角を占め、シリーズ4位を勝ち獲った。
  今季の成長株ともいうべき、安田裕信選手に話を聞いた。


───安田選手にとって2年目の全日本F3は、昨年に続いてスリーボンドレーシングからの参戦となりました。

安田:
そうですね。これまでのキャリアの中でも、自分自身初めて2年続けて同じチームで走らせていただきました。


───07年と08年、何か違いはありましたか?

安田:
やはり一番大きな違いは、去年はマルコ・アスマーというチームメイトがいて、先輩のアスマーのデータを見て、それを追いかけていくという立場だったんですが、今年は1台になって、自分が中心となってチームを引っ張っていかなければならないというプレッシャーはありましたね。


───去年は苦しい戦いが続いたと思いますし、最高位が4位ということで表彰台には残念ながら届かなかった。しかし、今季は2勝をマークするなど、大きくステップアップしたように感じるのですが。どんな変化があったのですか?

安田:
去年は自分にも自信がそんなになかったですしね……。う〜ん、なんだろう。今年はダラーラの代替えのシーズンということで、全チームが新しいマシンでの戦いになったじゃないですか。そういった周囲の状況も大きかったんじゃないかと。


───周囲の状況ですか。

安田:
そうですね。でも、去年はスタートして順位を下げてしまうケースも結構あったのですが、今年はスタートのポジションよりも上の順位でフィニッシュすることが多かったのは感じていますね。決勝でもそれほどペースが落ちないし、それなりにしっかり走れるようにはなったんじゃないかと思いますね。


───それは精神的な部分から来ているのでは?

安田:
精神的な部分は大きいでしょうね。やっぱり、自分の中では“今年しかないんだ!”って常に考えていましたから。


───なぜ“今年しかない”と?

安田:
だって、僕の場合はメーカーの育成システムを請け負っているチームで走っているわけではないですし、そういう意味では先が保障されているわけじゃないですから。スリーボンドというチームで走っているならば、そこで結果を出してステップアップしていくか、それができなければフォーミュラを引退するしかないと思いますから。2年間チャンスをくれたスリーボンドさんも、いくらなんでも3年目はないでしょうしね。


───なるほど。

安田:
ですから、そういう意味ではこのチームで2年目のチャンスをもらったということを非常に感謝していますね。去年の終わりに、もう今年はないだろうなと思っていたら、テストに呼んで頂いてチャンスをもらえたので……。


───安田選手はSRS-Fを出てFドリーム、そしてFCJというエントリーフォーミュラで経験を積んできたのですが、そういったカテゴリーとF3との違いは大きかったですか?

安田:
Fドリームではランキング2位ということでチャンピオンを獲れなかったので、一旦レースを諦めて1年間休んでいたのですが、たまたまFCJでもう一度チャンスをもらったというか、FドリームのときよりもFCJのときの方が、精神的には強くなっていたのかな、とは感じています。しかし、そのFCJのあとF3のステップアップしてからは、クルマの限界が非常に高くて常に自分の技量を高めていかなければならないと感じました。
  けれど、自分の技量を高めると同時に、開発やセットアップを進めてクルマのレベルも上げていかなければならなかった。その点が、それまでのカテゴリーとF3の大きな違いでした。F3では、それまでのカテゴリーのように、自分のドライビングのことばかり考えていれば良いというわけじゃないんですよね。


───ドライバーに掛かる負担も段違いに大きかったですか?

安田:
そうですね。セットをあまり触らないイコールコンディションのカテゴリーとは違って、F3ではチームで戦っていくわけで、ドライバーである自分がある程度中心となってクルマを作っていかなければなりませんよね。特にスリーボンドというチームには、過去経験豊富な“F3のプロ”みたいなドライバーが数多く乗って来ているので、そういった人たち同様、“自分がしっかりしていかなければ”という気持ちは強かったですね。でも、残念ながら僕にはそこまでの能力はまだ備わっていない。パオロ・モンティンやファビオ・カルボーンといった過去のスリーボンドドライバーは、やはりそういった力を持った人たちだったと思うんですよね。近年世界的にも頂点にいるトムスというチームに対抗する、というところまでは、悔しいけれどちょっと届かなかったかなと。


───とはいえ、今季は2勝しました。

安田:
雨でしたけどね(笑)。


───たとえ雨が安田選手に味方したとしても、去年はそういう不確定要素が影響するレースでも、勝ち負けができる位置にはいなかったと思いますが。

安田:
そうですね、やっぱり鈴鹿でポール・トゥ・ウインをしたことがすごく自信になりましたね。みんなから「雨だったからね」なんて言われましたけど、たとえ雨だろうと自分の中では別に関係ない、同じコンディションの中で自分は一番速かったんだ、そのときの実力では負けていなかったんだ、とね。ただ、そういう状況を常にキープできないのが悔しいんですが(笑)。


───よく“F3はプロへの登竜門”などと言われますが、安田選手はプロドライバーが多く戦っているスーパーGTでも走っていますね。安田選手自身も、やはり“F3はプロへの登竜門”だと感じますか?

安田:
そう思いますね。今のF3は特にコーナリングスピードが非常に高いので難しいですし、F3は他のカテゴリーに比べてもクルマの持っているポテンシャルが非常に高い位置にあるから、ホンネを言えばF3からGTに乗り換えるととても楽なんですよね。体力面プラス、コーナリングやブレーキングでの精神的な余裕というか、そういった部分で特に感じますね。去年はF3とS耐しか乗っていなかったのでよく分からなかったのですが、今年F3とGTに乗ってみて、強く感じました。特に、今年のF3はエボサスというパーツのせいでステアリングとか重いじゃないですか。だから、GTからF3に乗り換えると、正直きついんですよ(笑)。


───少し話がずれますが、今話に出たようにGTとF3と両方参戦している今季は、プライベートな時間はあまりないのでは?

安田:
いや、意外とそんなに忙しくはないし、自分の時間が減ったなとは感じるほどではないんですよ。だから、今年は去年以上にしっかりトレーニングをやっているし、チームともコミュニケーションを取ることにも時間を使えているような気がします。


───今はどこに住んでいるんですか?

安田:
住んでいるのは滋賀の実家なんですが、御殿場にスリーボンドさんの部屋があるので、ガレージでのチームとのミーティングではそこに泊まったりできるんですよ。


───実家にいるときは、どんな生活を?

安田:
今年はかなりトレーニングの量が増えたんですよ。だから、本当にトレーニングが多いですね。


───どれぐらいの時間をトレーニングに費やしているんですか?

安田:
え? ですから、“かなり”してますよ(笑)。


───それは、去年1年間で体力的な不足を感じたからですか?

安田:
いや、去年はそんなにきつくなかったんですけど、今年のエボサスが付いてからは大変ですね。でも、今後のためにも体力が付いていることは悪いことじゃないし、今年ダメならもう来年はない、来年には絶対ステップアップしたい、という気持ちでいるから、結構ちゃんとやってるんですよ。


───なるほど、そのためには今年の具体的な目標はどのあたりに置いていましたか?

安田:
やはり、雨では2回勝てましたけれど、ドライで1勝したかったですね。


───しかし、シーズンを終えてみて、結果的には果たせませんでした。

安田:
そうですね。ドライでの優勝もそうですが、シーズン序盤の良い流れを続けることが出来なかったという部分では悔しかったし、反省もしています。そのあたり、残念な部分は当然あるのですが、トムス勢に次ぐランキング4位というポジションを獲れたということは、それなりに納得の行く成績でした。シーズン当初の目標だった優勝とランキング4位を獲れたわけですからね。


───シーズン途中からの新エンジンの開発などはどうでしたか?

安田:
結果的に充分なテストができないまま、実戦投入という形になったのが辛かったかもしれませんね。レースウィークがぶっつけ本番ということで、バランスを取るのに苦労しました。けれど、終盤に一度プライベートテストを挟んだことで、大きく進歩もしましたし、最終戦の菅生ではかなり上昇機運をつかんだというか、右肩上がりでシーズンを終えられたんじゃないかと思いますね。エンジンが大きく変わったのに対して、充分なテストをしていないままレースウィークを戦うと、ようやくバランスが取れてきたかな、方向が見えたかな、というころにはもうレースウィークが終わってしまう、それでまた性格の異なる別のサーキットへ、というパターンがありましたから、やはりテストができなかったことが苦しんだ要因だったと思います。


───今シーズンを振り返って感じたことはなんでしょうか?

安田:
そうですね……。今年は2年目ということで、クルマについてのコメントなども去年よりは的確に、エンジニアに伝えられるようになったのが一番大きかったように思います。全日本F3を2年経験したことで、GTにおいてもレース中にミスなく走れて、仕事がこなせるようになったと思うんですよね。F3をやっていたことで、それ以外のカテゴリーでも一歩レベルアップした走りができるようになったというか……。F3での経験が、結果的に今年GTでの鈴鹿1000kmでのクラス優勝にも繋がったように思いますね。



───来年以降に向けての希望は?

安田:
やはりF3からFニッポンへ、GT300からGT500へのステップアップを狙いたいですよね。それが実現できるよう、今後も前向きに活動して行きたいと思います!



■撮影協力:ZIINO CLASSIC
宮城県仙台市青葉区一番町4-3-1 菅原酒店ビル2F 022-222-6888
http://www.dsgroup.co.jp/ziinoclassic/index.html



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