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 こんにちは。長屋宏和です。2016年に入って、初めてのサーキットが全日本F3選手権の富士ラウンドでした。台数が少しずつ増え、見ごたえのあるレースを期待していました。何より新人ドライバーが多いことで、成長を見られることがすごく楽しみでした。

 今年も私が感じた全日本F3選手権をストレートに伝えていきます。本年度もよろしくお願い致します。

■グリット前走行の『新しい発想』!

 5月15日、第4戦の決勝レース前のグリッド前走行のときのこと。ヤン・マーデンボロー選手(B-MAX NDDP F3/No.22)はマシンに乗り込み、その走行時間が終わるのをジッと待っていました。最初は「トラブルなのかな?」と思いましたが、自分たちの意思で走行していないのだと気が付きました。たしかに自分に自信があれば、このグリッド前走行の2周は無駄ととらえ、“走行しない選択肢”もあるのだと思って見ていました。

 予選でアウトラップとインラップを含めて7周タイヤを使い、グリッド前走行で合計10周使ったタイヤと、予選と、ピットからグリッドへ走行するだけの8周使ったタイヤとでは、パフォーマンスの違いは必ずあります。大きなセッティング変更をしているならば、セット変更を確認する意味で走行する意味がありますが、ライバルよりも少しでもいい条件で決勝レースに挑みたいのであれば、この2周の差は大きいと思います。

 決勝のペースを楽しみに見ていましたが、接触もありタイムの大きな変化を感じられませんでした。この判断はドライバーからの意思か、チームからの指示かは分かりませんが、この考えの提案は双方に自信がなければ成立しない動きです。まわりに合わせるのではなく、意思を尊重し、チャレンジしているチームとドライバーをすごく楽しみに感じました。

■F3-Nの見ごたえのあるバトル

 F3-Nでは、14日の第3戦、15日の第4戦ともに最後まで誰が勝つか分からない、見ていて面白いレースが展開されました。

 もちろんF3-NではレースのレベルがいわゆるJ項車両とは違いますが、観衆を楽しませるという意味では、大変面白いレースになったと思います。バトルをするとタイムが落ち、後続車が追いつき白熱する。ヘルメットをかぶっていてもドライバーの表情や気持ちが伝わってきて、その繰り返しを見ることができたと思います。

 バトルの経験を積み、仕掛けるタイミングやロスしないオーバーテイクなどを学んでいく良い場所だと思いました。

■まだ16歳!

 F1では、17歳のマックス・フェルスタッペン選手(レッドブル)が最年少のウイナーとなりましたが、レース界全体が低年齢化しています。日本でも、弱冠16歳で全日本F3選手権に参戦する阪口晴南選手(HFDP RACING F312/No.7)がいます。

 海外のF3では大クラッシュが起き、モータースポーツ界の低年齢化が問題視されていますが、私は下のクラスで2〜3年の経験を積んでいるよりも、1年でも早く上のクラスに上がれるチャンスがあるのならば、どんどん上がるべきだと思っています。

 チャンスをつかむことは待ってはくれません。

 その瞬間を逃すと、二度と同じ瞬間は来てはくれません。

 たしかに経験を積むと考えに余裕ができ、視野が広がります。同じ16歳でも、モータースポーツで経験を積んでいる16歳は、他の16歳に比べて“人間力”は格段に高いと思います。

 F4やレーシングカートに参戦し、F3でも走行時間とレース経験を積み、来年度もステップアップや海外進出、マカオ経験などを積み重ねていけることができたら、本当に楽しみな存在なのですが、何より“結果が命”の世界。彼らの上位争いを早く見てみたいです。


1979年12月31日生まれ。13歳のときに見たF1日本グランプリに影響され、レーシングドライバーを志す。2002年、TODA RACINGから全日本F3に参戦。同年F1のサポートレースでクラッシュし、頚椎損傷C6の重傷を負うが、必死のリハビリで2004年、ハンドドライブでのレーシングカート走行を果たし、大きな感動を呼んだ。チェアウォーカーとなった後、自身のファッションへのこだわりを活かし、チェアウォーカー向けファッションブランド『Piro Racing』を立ち上げ話題に。2013年人間力大賞グランプリ、内閣総理大臣奨励賞受賞。いまも愛するF3の現場を訪れるほか、ハンドドライブで自らサーキットを楽しんでいる。


コラムを読んで頂けている皆さまにも、全日本F3選手権を楽しんで頂きたいと思っています。皆様が知りたい情報がございましたら、Twitterやfacebookにお気軽にお問い合わせください。

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